院長の「JoJoブログ」
時代の先を行く女性に学ぶ
2016-02-27 17:47:22投稿
篠田桃紅著、「103歳になってわかったこと」を読んだ。
自分自身、明らかに人生の折り返しを過ぎたと思っているせいか、その後半をどう生きるのかということについて、考えることが多くなり、高齢の著者が書いた本を読むのが好きだ。
100歳以上の人が書いたものとしては、有名な、聖路加病院の先生の本もよんだけれど、結構、内容がお説教じみていて、個人的には好きではなかった。
篠田桃紅さんという、美術家については、この本を本屋で見かけるまで、全く知らない人だったけれど、読んでみて、その考え方、生き方をちょっと見習いたいなと思ってしまった。現在もお元気で、なおかつ、現役の芸術家として仕事もこなしている、篠田さん。大正生まれの女性としては、かなり稀有な生き方をされていて、結婚せず、戦後すぐにニューヨークで暮らすなど、半世紀以上、時代の先を生きている人だと感じた。
その昔、若くして乳がんで亡くなられた、千葉敦子さんという、これもまたニューヨークを中心に活躍されていた女性ジャーナリストがいた。昭和の終わりのそのころ、少なくとも10年は時代を先に行っている人だと、学生時代に著書を何冊か読んで感銘をうけ、今でもその本は持っている。
実際、がんという病名を、本人に告げることはタブーとされていたその時代に、がん告知をうけ、治療を自ら選択してがん発症からの数年間を生きた生き方は、13人に1人の女性が乳がんに罹患する現在では、ごく当たり前になっている。彼女が亡くなってから、すでに30年がたとうとしているわけで、実際には、10年どころか、30年先を行く女性だったのだど、乳がんに携わる人間として、つくづくすごい人だったのだと感じる。
千葉敦子さんについて、学生時代の私は、人生の前半を生きる上での憧れの女性だと感じていた。
彼女が亡くなられた時の年齢を超えて生きている今の自分としては、とてもその憧れの女性のような人生の前半をすごしてきたとはいえないけれど、今後後半を生きる上において、篠田桃紅さんの考えは、とても参考になるものだと考えている。
日々、老化現象と闘っているつもりの自分ではあるが、篠田さんの考えに従えば、闘っていると考えること自体が、無意味に思えてくる。老化は必然で、決して自分に訪れないものではないのに、それに闘いを挑んで、何の意味があるのかということだ。おととい、大動脈解離で突然死した人が梅田で暴走するという痛ましい事故があったけれど、事故死にしても、病死にしても、いつ何が起こるかわからないということを思い知らされる事故でもあった。死が恐ろしいと思ってしまうのは、必然なことなのに、それがいつ訪れるかわからないということが一番の理由なんだろうと思う。そうであれば、誰もがいうように、今を大切にするしかない。今自分がやりたいこと、自分が好きなことが大事なのであって、人がどう思うか、世間がどう見るかといったことにばかり気をとられていると、結局、闘ってしまうことになる。
着るもの一つにしても、篠田さんは、現在も着物以外は着ないそうだが、おそらく、流行などということには、全く関心がないのだろう。洋服になれた自分たちからみれば、生活しにくいと思える着物でも、幼い頃からずっと着物で過ごしてきた彼女にとっては、ちっとも不便な衣類ではないのだ。自分が好きな着物で過ごすことが大事なのだ。
周りがどうあろうと、自分が良いと思うものと付き合っていく。私にとっての「着物」をいつも身体と心に身につけて、人生の後半を過ごしていきたいなと思う。