院長の「JoJoブログ」
顕微鏡
2017-10-03 23:32:51投稿
医学部の学生のころに始まり、婦人科医になってこのかた、顕微鏡というのは、商売道具のひとつというか、切っても切れない縁というか、それをのぞいてみる日はまあ、1年のうち半分くらいかなという生活。
高校で美術部だった私は、医学生のころ、顕微鏡を見ながら病理組織のスケッチをする実習で、いわゆる写生しかできず、模式的な図が描けなくて苦労したけれど、他の実習に比べれば、結構好きな時間だった。
平成の時代になり、何でもデジタルになって、今の医学生は、顕微鏡と連動したモニターを見ながら、マウスの操作で、病理診断し、スケッチもするらしいけど、昭和の時代の学生の私としては、顕微鏡を直接のぞくことなしに、細胞をみるなんて、どゆこと?と思ってしまう。細胞診の勉強などもあまりしていないので、偉そうなことは言えないけれど・・・
とはいえ、日々の診療において、分泌物の検鏡で、ほぼ毎日顕微鏡は使っている。お世話になってるクリニックの顕微鏡は、なんと昭和57年製。11年前に、勤務医をやめるとき、勤めていた病院で、顕微鏡を買い替えることになったのを聞き、譲ってもらえないか交渉したところ、あっさりOKとなり、タダでもらったものだ。
実際、当時、外来に置いてあり、診療にはちゃんと使えていた。古いけど、分解掃除でもしてもらえれば、十分つかえるよねぇ・・・買ったら結構高いしねぇ・・・
ということで、新規開業の真新しい機械たちのなかで、ひときわういていた、その当時25歳の顕微鏡。
つてを使って、レンズの掃除などをしてもらい、切れた電球を数回交換したくらいで、いまだに現役で活躍しているMy顕微鏡。
ところが、ここ数年は、ピントがあいにくい感じがしてきて、私の老眼が進んだせいだろうと思っていた。ただ、最近、ピントの問題だけでなく、光源の強さをあげていっても暗い感じになってきたので、どうやら、顕微鏡そのものの問題という気がしてきた。
一般的に、家庭用の電化製品だったら10年、パソコン関係のものや、画像診断用の医療機器は6年くらいが使用の目安と思われるけれど、顕微鏡なんて、レンズと光源だけの、超アナログ機械。ダイアルをまわして、位置とピントを合わせるだけ。唯一、光源は、電気を使ってはいるけれど、スイッチをいれるだけで、写真撮影もしないし、プレパラートをのぞくだけのためなんだから、見える限りは使えると思っていた。
それでも御年35歳の顕微鏡。さすがに、診療中に見えづらいと、余計な時間を使って、患者さんに迷惑をかけるので、今日、業者さんに頼んで、レンズの掃除などをしてもらった。
5段階の対物レンズのうち、実際によく使うのは、20倍。10倍と40倍も使うけれど、その他はまず使わない。光源の調節と、レンズの掃除をしてもらったところ、10倍と40倍のレンズにはカビが生えているとのこと。レンズだけを交換してもらうことができるのかどうか恐る恐る尋ねると、型が古いので、修理は不可能で、新しく買ってもらうのがよいとのこと。
当たり前です!
それでも、とりあえずの処置はしてもらい、来年くらいには、買い替えも考えますのでと、お帰りいただいた。
そして・・・
その数時間後、分泌物の検鏡をしたところ
「なんということでしょう!!」
こんなにクリアーに細胞の形が見えるなんて・・・私の老眼のせいじゃなかったんだ・・・
上皮細胞の輪郭が・・・白血球が・・・こんなにきれいにみえるもんなんだ・・・
最近、公私ともに、あまりいいことがなかったけれど、久々にいいことがあった気がした。
普段この顕微鏡をのぞいていたのは、自分以外誰もいないので、この感動をわかちあえる人がいないのが、残念でならない。
これで、当分、買い替えはないなぁ。