院長の「JoJoブログ」

求愛行動

2018-01-22 20:02:32投稿

 昨日、福岡で、日本性差医学・医療学会に参加してきた。
この学会は、まだ新しいかなりマイナーな学会で、さまざまな領域の医学的男女差をテーマにしている。もともと、学会を立ち上げたのが、循環器内科の先生なので、参加者も、循環器内科医が中心で、泌尿器科や産婦人科もちらほらという感じ。
以前から学会員ではあったのだけど、学会自体には、あまり参加しておらず、今回、開催地が近く、少し興味ある内容の演題があったので、久々に行ってみようと、日帰りで出かけた。

公開シンポジウムでは、性差生物学についての話題で、東大卒の医者ではない学者先生の講演が3連ちゃん。初めは農学部の先生で、魚類の研究をしている方。

哺乳類、鳥類などは、胎児期から出生直後にかけて、生殖器の性とは別に、男性ホルモンが働くか働かないかによって、メスの脳、オスの脳ときまってしまい、性行動が、メスとオスで異なるようになり、生後の環境などで、それが転換することはないとのこと。仮に、生殖器がメスであったとしても、実験的に出生時に男性ホルモンを浴びせると、成熟してからの繁殖活動はオスパターンになってしまい、治ることはないのだそうだ。けれど、魚は後天的にそれを変えてしまうことができるというのが、講演内容の中心。
多くの動物は、メスの気を引こうと、オスが求愛行動をし、カップル成立の決定権はメスにあるのが普通。その求愛行動は、出生時に決まったオスの脳を持つものが行うということだ。

魚の求愛行動というのもいろいろあるらしいけれど、メダカの場合、オスはメスの前でくるっとまわる”ダンス”を行うのだそう。普通オスがそのダンスをおこなうけれど、実験で、男性ホルモンをメスに与えると、メスなのにそのダンスをしてしまうという結果が出ているという発表。

私としては、魚の脳がどうであっても、普段の仕事や日常生活には関係ないんだけど、なんといっても、今回の講演では、実際の2匹のメダカのビデオを見せていただいたのが面白かった。おそらく、解説してもらわなければ、見ていても何の事だかわからない程度のメダカの”ダンス”。ホンの一瞬、クルッと小さく1回転するのだ。
「よし、帰ったらみてみるぞ!」
学会から帰って、クリニックのメダカを見るのが楽しみになった。

早速、防府に帰ってきてから、待合室に置いてある熱帯魚の水槽を観察。中にはメダカの仲間であるグッピーが何匹かいる。気を付けて、グッピーたちをみていると、1匹のメスに3匹のオスがいつも後を追いかけるように泳いでいることが判明。3匹のうちの1匹は、それこそ、どこに行くのも一緒。決して、メスがオスを追いかけることはないことがわかる。あまりにもいつも追いかけられているので、人間界なら、ストーカーの被害届が必要だと思うのだが、グッピーのメスは迷惑と思っていないのかしらん?
学会では、座長の男性ドクターが、「こういう発表を聞くと、男というものは哀れだなと思ってしまいます。」というもっともな感想をのべられていたけれど、まさにその通りと思いながらグッピーたちを眺める。

これで、毎日の水槽観察が楽しみになったのが、今回学会参加の一番の収穫。