院長の「JoJoブログ」

空気教

2020-09-27 11:29:59投稿

Kindleのマイライブラリーに、着々と未読本が増えている昨今、このご時世、コロナ対策関連本には、ついつい目がいってしまい、クリックをしてしまっている私。

とりあえず、勉強しなきゃと読んでみた本、「感染症の世界史」石弘之著(角川ソフィア文庫)では、紀元前から続く、人類とパンデミックの戦いについて書かれており、著者はその最後で、近い将来おそらく中国の動物から新しいウイルスが出てパンデミックを起こす可能性があると、見事に今回のCOVID19を予言している。
この本は、18年1月に出版されたものだけど、「パンデミックの文明論」(文春新書)は、ヤマザキマリと中野信子という女史二人の対談形式の本で、8月に発売されたばかりのものだ。二人とも、ヨーロッパの生活が長く、なぜ、今回のコロナ対策で、日本では死者が少なくすんでいるのかということを、日本人にしか理解できない”空気”によるものだと結論づけていて、日本人の私にはものすごく納得できるものがあった。
日本には、欧米におけるキリスト教のような社会を支配している宗教が存在せず、その代わり、「空気教」に支配されているという話。「空気」という戒律がコロナを生きづらくさせたということだ。
ちょっぴり昔、「KY」という新語が流行ったけれど、「KY=空気読めない」まさにそれ、空気というのが、何よりも恐ろしい社会なのだ。麻生太郎大臣によるところの「日本人は民度が違う」という見方もあるのかもしれないけれど、緊急事態宣言中、外出しても、法的措置がとられるわけでもないのに、誰も外出できなかったのは、「外出してはいけない空気」に支配されていたし、マスク着用も義務化されているわけでもないのに、街を歩けば、ほぼマスクをしていない人がいないのは、「マスクをしないといけない空気」を吸っているからなのだ。
行き過ぎた”自粛警察”については、空気教過激派といえると二人は言っている。
ほとんどが同じ民族で、江戸時代の鎖国もあり、島国としての、その独特の文化、社会を形成して来た歴史が、空気教を生み、空気が読めない人は、締め出されてしまうことが、パンデミックにおいては、良いほうに働いたのではないかと言われている。
コロナ禍において、日本と他国との違いについては”ファクターX”などといわれて、色々と原因はあるのだと思うけれど、とりあえず、空気教というとらえ方は、パンデミックに限らず、日本社会をうまく象徴した考えだなあと腹に落ちた私。日本で生まれ育ち、戦前生まれの両親のもとに育った私は、これからも、無意識に空気に支配されるんだろうなと思っている。

ついでに、コロナ関連で読んだもう1冊、新薬を見つけるドラッグハンターの歴史について書かれた本、「新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求」(早川書房)は、ある病気に効く新薬を作り出すことの大変さを製薬会社に勤めていた研究者によって書かれたものだが、この本を読むと、いかに新薬を発見することが大変なことかということがよくわかり、新型コロナウイルスの特効薬が出現する可能性は高くないということを認めざるを得ない。

結局、マスクして、3密を避け、アルコール消毒をしましょうという「空気」に従うしかないのかな・・・