院長の「JoJoブログ」

FAX

2023-08-31 23:56:00投稿

先週、40年以上付き合いのある友人から、26年前に私が彼女にむけて送ったFAXが、引き出しの奥から出てきたと連絡があった。
26年前、妊娠20週の身で、アメリカにわたり、慣れない海外生活が始まって2か月くらいたった時の近況を知らせた5枚にわたる手書きの文章なんだけど、そんなFAXを送った記憶は100%私の中にはなかった。
そもそも、26年前、インターネットはまだごく一部の人しか使っていなかったし、携帯電話も世の中に出始めたばかりだったので、日本にいる家族や友人とのやり取りは、FAXをよく使っていたのは確かだ。時差も大きいので、なかなか電話もできないし、収入のない貧乏生活をしていたので、電話代もばかにならず、手紙をわざわざ書くほどのこともないし・・・けれど、そのFAXについての記憶はゼロ。連絡をもらっても、「何、それ?」

そんなことで、そのFAXの現物を返してもらった。驚いたことに、茶色く色あせた感熱紙に書かれた文字がまだしっかりと読める状態だった。普通の紙ならまだしも、感熱紙の文字なんて、すぐ消えてしまうはずだが、友人がいうには、引き出しの奥の物の下に敷いてある状態だったので、まったく光があたっていなかったから、消えなかったんじゃないかとのこと。もちろん、わざわざとっておいたわけでもなく、単に、引き出しの中で忘れ去られていただけだったのが不幸中の幸い?

令和時代の昨今、文字を手書きすることが、ほとんどなく、タイピングは上手くなっているけれど、字はすごく下手になっているのを実感している。しかし、そのFAXは、手書きの文字がびっしりで、われながら、きれいに書いているよなと思ってしまった。読んでみれば、自分の字に違いなく、内容も、アメリカにわたって、色々戸惑ったことが書いてあり、あまりの懐かしさに、目頭が熱くなってしまった。メリーランド州の運転免許の試験をうけたとか、家を運ぶ巨大なトラックを見たとか、完全に忘れていたことを、読みながら細い糸を手繰り寄せる感じで思い出すと、心拍数が増えてくる。
そのFAXの最後には、パソコンはまだ箱の中だけど、日本語の設定ができるようになったら、次は、ワープロでうって送りますと書いてあった。さすがに、その後、だれにどんなFAXを送ったのか知る由もないけれど、世界中のどこにいても、LINEですぐに連絡できる今となっては考えられないアナログなやりとりも、いいもんだなとしみじみと感じる出来事だった。