院長の「JoJoブログ」

乳癌検診学会にて

2023-11-25 22:38:02投稿

昨日から福岡で開催されている(なんと大相撲九州場所と目と鼻の先で同時開催!)第33回日本乳癌検診学会に参加してきた。
ほぼ毎年参加しているこの学会で、招待講演を聴くことはあまりしてこなかったのだけれど、今回の招待講演1は、演題に興味をそそられたので、面白半分に聴講してみた。
抄録も読まず、何の話かもあまり知らずに、フラっと学会のメイン会場に入ってみると、その圧倒的なプレゼンテーションに開いた口がふさがらなかった。
とりあえず、講演の演題は
『医用画像からの3DCG再構成を「超速く」「超綺麗に」しただけで何かが変わるのか?』
というもの。そして、この講演の演者、瀬尾拡史氏がまた凄かった。
現在38歳と、とても若いドクターなんだけど、中学生のころ、NHKスペシャル「脅威の小宇宙、人体」を視聴してそのCG映像に感動し、科学的なCGを作るために人体のことを知りたいという理由で東大医学部に入学したという、まあ、普通に考えて、天才とはこういう人のことをいうんだな・・・という人物。
医学科を卒業して臨床の基本を学ぶために研修医として2年間は働いたそうだけど、その後は、CGを作成するための会社を起業し、現在に至っているということで、医師の資格をもつ、CGソフト作成技術者というたぐい稀な科学者なのだ。特に、心臓の動き、作りを3DのCGで表現し、さまざまな賞も受賞されており、世界的な評価を受けているということで、コンピューターに疎い普通の医者が簡単に操作できるソフトを開発して、医学界に貢献しているのだ。
CTやMRIという、普段目にする医用画像から、CGを作るというのは、彼に言わせるととても単純で、技術的なことは20年前のものでもできるらしい。要するに今流行りのAIなどは、全く不要らしいのだ。
と、そんなことは、こちとら庶民の頭では、言われてもピンとこないけれど、なんといっても、開いた口が塞がらないのは、本当に、そのCG画像の分かり易さなのだ。手術前に、これだけ立体的に患者さんの病巣がはっきりわかれば、手術をする立場の医者にとっては、本当に助かるし、単なるCTではわからなかった病変も、CTを3次元のCGに変換することでみえてくるケースがあることも、ありがたいことだ。
コンピューターの世界、情報処理の世界の進歩は、色んな法律がついていけず、様々なリスクをはらんでいるのも確かだけれど、医療界にとっては、進歩して悪いことは何一つないのではないかと思うので、これからも、彼の活躍を願うのみだ。
今回の乳癌検診学会に、全く乳腺の仕事をしていない人を招待して講演をしてもらったということは、学会長が情報処理社会の今後を見据えてのことだろうと思う。コンピューターに疎い自分としては、新しいことから逃げないようにしなきゃなと思わされただけでも、参加して意味のあった学会だったかな。