院長の「JoJoブログ」

お疲れ様

2024-09-10 18:52:19投稿

当院には、若いベトナム人女性が、受診されることが、時々ある。
彼女たちは技能実習生として防府市内で仕事をしているようで、数年の滞在が多い。これまで、数十人は受診しており、通訳の人と一緒に来ることもあれば、職場の日本人上司と来ることもある。時に、一人でやってくる場合もある。
いずれにしても、まったく日本語に不自由しないケースはなく、当院では、ポケトークを駆使して、何とか問診をとり、診察後の説明をしているけれど、医学的なことをわかりやすく説明するのは、なかなか難しいのが現状。もちろん、ベトナム人に限った話ではなく、外国人患者さんに対して、十分な説明ができていないもどかしさは常にある。英語以外の外国語は、まったくゼロの私にとって、患者さんの日本語に頼るしかないのがつらいところだ。中国人の場合は、漢字を書いてみるという手段が奏功することもたまにあるけれど、ベトナム語は、アルファベットでもない文字なので、完全にお手上げ。正直、英語のレベルも全然なので、英語ならOKというわけではないけれど・・・

最近、立て続けに、カタコトの日本語が喋れるベトナム人患者さんがやってきて、説明が終わって、診察室を出るときに、私に対して、いずれも「オツカレサマデシタ」と言った。
一般的に、病院で、「お疲れ様でした」というのは、検査や処置の済んだ患者さんに対して、医療者側がいうセリフで、患者さんが医者にいう言葉ではない。おそらく、彼女たちは、職場で、仕事が終わって帰るときに、日本人がみな「お疲れ様」と言っているのを聞いているのだと思う。ま、仕事終わりのあいさつには、「さようなら」とは言わないよなぁ・・・職場なら、「お疲れ様」はお互いに言い合うこともあるし、仕事始めに、先に職場に入っている人に対して言うこともあるけれど、別れ際に使う言葉として自然といえば自然。
こう考えると、どういう時に「お疲れ様」を使うのがよいのかを、外国人に理解してもらうのは、結構むずかしいよなと思う。ちなみに、翻訳アプリで、「お疲れ様」を英語に訳してみると、”Thank you for your hard work”とある。これを逆に日本語に直訳すれば、「あなたが懸命に働いてくれたことに感謝します」ということになるわけだ。
実際、単に「お疲れ様」といっても、気持ちのこめかたによって、ニュアンスは色々で、仲間内で、「おつかれぇ~」と、あいさつ代わりのこともあれば、「お疲れ様でしたねぇ・・・」と本気でねぎらうこともある。さらに、「お疲れ様」には必ず”お”がついており、あくまでも自分の”疲れ”ではなく、相手の”疲れ”だということもおそらく外国人にはわかりづらいと思う。
「お疲れ様」に限らず、世界中で一番難しい言語ともいわれる日本語を、外国人にわかってもらうのは、本当に難しいと思う。そんな国にやってきて、必死に働いてくれている彼女たちにこそ、「お疲れ様」と言ってあげなきゃいけないなぁ。
今度また、ベトナム人患者さんがきて、「オツカレサマデシタ」を聞いたときには、私が、一生懸命ポケトークで何とか説明したことに対するねぎらいの言葉として受け止めるしかない。でも、そこで、私がいうセリフは、いつも通りの「お大事になさいませ」
日本語は難しい・・・